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沙流川アッパー(2018/10/07)

増水した川はラフトで下ろう

カヌークラブの10月例会二日目は、前夜から降り始めた雨で川は大増水。
それでも、増水大歓迎のホワイトウォータージャンキーの人達は、雨が上がった午後から川を下るという。
一方、彼らと比べるとまだまともな神経を持ち合わせているメンバーは、HOAさんにお願いしてラフトで川を下ることにしていた。


ラフト装束に身を包み

せっかくのラフトツアーなので赤岩青厳峡を下ってみたかったが、鵡川はどんどん水が増えてきていてラフトツアーも難しいかもしれないとのこと。
最終的に、カヤックメンバーも一緒に沙流川アッパーを下ることで落ち付いた。

ラフト組は7名。
全員が同じドライスーツにライフジャケット、ヘルメットに身を包む。
私は、GoProやカメラを取り付ける必要があったので、自前のヘルメットとライフジャケットを使用する。
それにしても、この装備に身を包むと、どこかの観光ツアーの団体さんにしか見えない。

2艇のラフトに分乗し、まずは地上でパドリングの練習。
「イチ、ニッ、イチ、ニッ」と声を揃えてパドリングしていると、カヤックメンバーが面白がってカメラを向けてくる。

1人5500円の料金を支払って参加するラフトツアーである。
料金分は楽しまなければならない。
川を下っていて時々ラフトツアーと出会うことがあるけれど、そんな時は「ラフトで下るよりもこちらの方が楽しいのに」と思いながら見てしまう。
今日は何時ものそんな思いをかなぐり捨てて、ツアー客として思いっきり楽しむつもりだった。


私たちの乗るラフトのガイドはブータン人

HOAのラフトガイドは国際色豊かなメンバーばかりで、今日の私たちのガイドは来日1年目のブータン人。
パドルを揚げてハイタッチする時のブータン語を教えてもらったが、直ぐに忘れてしまう。

川に漕ぎ出して、まずは前漕ぎの練習。そしてその後にハイタッチ。
「何とか、何とか、サンポーラ!」
多分、最初に教えてもらったブータン語とは全く違っていそうな気がする。

スタートしてしばらくの間は、これと言った難所も無い。
それでも、増水しているので、所々にちょっとした波が立っている。
そんな波に突っ込むたびに「行け~っ!」とか「きゃっほーっ!」と歓声を上げるが、今一迫力不足である。

「やっぱり赤岩青厳峡とは違うな~」と思っていたら、次第に大きな波が現れるようになり、時々顔にも水がかかってくる。
今日は初めて乗るラフトを目一杯楽しもうと思い無理してテンションを高くしていたけれど、無理しなくてもそのテンションを保てるようになってきた。


どのルートを下るかはガイド任せ

去年の秋に初めて沙流川アッパーを下った時は、かなり水が少なかった。
水が少ないからこそ大型カナディアンでも下れたけれど、少しでも水が増えればもう大型カナディアンで下れるような川ではなくなる。

その時に下見をしてから下った瀬にやって来た。
そこらじゅうが岩だらけで、「一体何処を下るんだ?」と面食らったところである。
それらの岩は殆どが水没していたけれど、雰囲気で直ぐにその場所だと分かる。

どのルートを下るのかはガイドに任せるしかなく、ガイドの「はい、漕いで~」、「はい、ストップ~」の声に合わせてパドリングするだけである。
かなり昔に、クラブのメンバーでラフトに乗った話を聞いたことがあるが、皆が好き勝手に漕ぐものだからガイドはとても苦労したらしい。
自分の好きな場所を下ってみたい気はするけれど、ここでまさかチキンコースを下るわけがなく、お客さんを一番楽しませるルートで下ってくれると信じて、素直にガイドの指示に従う。


国道横の瀬

そして、たっぷりと楽しませてもらった。
普通のお客さんじゃなくて、瀬の中を下るのが楽しくてしょうがない人間ばかり乗せてるのだから、ガイドだって楽かもしれない。
ちょっとした落ち込みや波を見ただけで、「落ちてるよ、落ちてるよ~」、「凄いのくるよ、くるよ~」って大騒ぎしているのである。

Y田さんの連れてきた彼女は、カヌーにはほとんど乗ったことがないみたいだけれど、それでも「楽しい~」って喜んでるのだから、やっぱり私たちと同じ種類の人間みたいだ。

次の国道横の瀬も凄いことになっていた。
グチャグチャの波が右から左からと次々に襲いかかってくる。
ここで初めて、自分たちがカナディアンに乗っていて沈するイメージが頭の中に浮かんだ。
ここまでは、たとえ波が大きくても逃げられる場所もあり、自分たちのレベルでも何とか下れるだろうと見ていた。
しかし、さすがにここでは無理である。



カナディアンのタンデムで川を下っていると、どうしても限界を感じてしまうことがある。
それは、増水した川で大きな波が立っていたり、大きな落ち込みがある時である。
波を越える度にカヌーの中に水が入ってきて、最後には航行不能となってしまうのだ。


何度も頭から水を被るけれどラフトならば大丈夫

一度はそんな川を下ってみたいけれど、そのためにはラフトのツアーに参加するしかない。
それで、増水した春の赤岩青厳峡を一度ラフトで下ってみたいと以前から考えていた。
その夢がたまたま今回実現したのだから、嬉しくてしょうがないのである。

カヤック組は、最初は私たちのラフトと一緒に下るつもりでいて、その了解も得ていた。
実際に、ラフト2艇の他にガイドの乗るカヤック2艇が付いていて、先の安全を確認したりしながら一緒に下っていた。

しかし、ラフトチームはどんどん先に下っていくので、カヤック組はそれに全然付いて来れなかったのである。
そもそも、ガイドが乗っているカヤックとは浮力も違うし、そのスキルも下見しないでどんどん瀬に入って行けるようなレベルではなかったのだ。


水門と水面の隙間は僅かしか開いてない

私たちは、キャーキャーと歓声を上げて下りながらも「カヤック組は本当にこんな流れを下れるのだろうか?」と心配になってきた。

堰堤の水門を通り抜けるところでは、ゲートと水面の間隔が増水しているものだから僅かしかない。
そこを、ラフトの中に隠れるようにして通り抜ける。

するとその先には巨大な白波が待ち受けていた。
その波を頭からかぶりながら通り抜けると、更にその先では複雑な波が逆巻いていた。
ガイドが大声で「漕いで、漕いで、漕いで」と連呼するので、私たちも必死になってパドリングする。
迫力満点である。


水門を抜けてきた後続のラフト



思いっ切り水を被る

沙流川アッパーの核心部はまだこれからである。
再び岩だらけの瀬に突入。
そこの最後が大きな落ち込みになっていた。

去年はその落ち込みをカナディアンで下っていたけれど、普通は増水すると落ち込みは潰れてしまうものである。
しかし、その落ち込みは潰れるどころか、更に落差が大きくなって迫力も増していた。

落ちた瞬間に大きく煽られて、後ろに乗っているY田さんの彼女の顔面に私のヘルメットが思いっきりぶつかってしまう。
「大丈夫?」と後ろを振り返ると、更にその後ろではガイドさんがラフトの中でひっくり返っていた。
こんな川でも、ラフトならば安全に下れると思っていたけれど、どうやらそうでもなさそうだ。


顔面はぶつけるし、ガイドはひっくり返るし


ラフトの縁に腰掛けて漕ぐのだけれど、シートベルトをしている訳ではない。
中の隙間に足先を突っ込んで、体を支えているだけなので、かなり不安定である。
それなので、大きな波に突っ込む時はラフトの縁に回してあるロープを掴んでしまうが、ガイドさんから「漕いで、漕いで」と言われるので、直ぐにロープを離して漕ぐしかない。


スタッフがカメラを構える瀬が迫ってきた

それでも慣れてくると、波に合わせてバランスを取っていれば、そう簡単に落水しないことが分かってきた。
そうすると、波に突っ込むのがさらに楽しくなってくる。

前方に見えてきた岩の上に、スタッフと思われる人がカメラを構えて立っているのが見えた。
普段のクラブのツアーでも、私がカメラを構えて待っている場所は、大体が何かが起こりそうな場所なのである。
ガイドさんから、最後はラフトの中に身を隠すように身振りで説明される。

瀬の中に入ると、ガイドさんが大声で「漕いで、漕いで」と絶叫する。


サーフィンするもう一艇のラフトチーム

そして落ち込みの中へ突っ込むと、今度はホールの中に引きずり込まれそうになり、必死にパドリングする。
何とかホールから抜け出して、ホッとしながら後ろを振り返ると、もう一定のラフトが豪快に落ち込みに突っ込んでいた。
もう楽しくてしょうがない。

今度はガイドさんが「サーフィン、サーフィン」と言っていた。
望むところである。
先ほど豪快に落ちた場所に向かってラフトを漕ぎ進める。
目の前に水の壁が迫ってきたかと思うと、突然前の前が真っ白になる。
そのままエンダーでもできるかと思ったけれど、直ぐに弾き出されてしまった。

もう一艇も突っ込んでいったが、o_nちゃんが落水。
ガイドさんに助け上げられていたが、何だか楽しそうである。


サーフィン中に落水して引き上げられるo_nちゃん



次は前回ポーテージを余儀なくされた、滝と言っても良いような落ち込みである。
そこがこの水量でどうなっているのだろうと考えるとワクワクしてくる。
しかし、その滝は潰れてしまって、滝と言う感じではなかった。
ちょっと拍子抜けしながら通過するが、その先に迫力のある瀬が続いていて、何度も頭から水を被りながらようやく瀬を通り過ぎる。


束の間の安楽

穏やかな流れに入って、ようやくホッと一息。
しかし、その程度では終わらないのが沙流川アッパーである。

激しい流れが岩にまともにぶつかっていた。
流れに乗ってラフトがその岩に向かって直進していく。

ガイドさんがわざとその岩にぶつかろうとしているのか、それとも避けようとしているのかが分からない。
避けるつもりならこちらも漕ぎようがあったのだが、分からないままに岩壁に激突。

キャッホーと喜びながら後ろを振り向くと、ガイドの姿が消えていた。
そしてY田さんの彼女も落水。


Y田さんの彼女を引きずり上げる

これでようやく自分たちの意思でラフトを漕げるようになった。
落水した人たちの方へラフトを近づける。
サポート役のカヤックが直ぐにやってきて、まずはガイドがラフトに這い上がり、続いてY田さんの彼女を引きずり上げた。
やっぱり、油断しているとラフトから振り落とされるくらいの流れの中を下るのが面白いのである。

そうして1時間程度で沙流川アッパーを下り終えてしまった。
そのまま迎えのバスに乗ってHOAへと戻る。
自分たちで車の回送をすることも無く、ツアーで川を下るとまるで大名気分である。

運転手さんが気を使って、カヤック組の様子を見に行ってくれる。
途中の橋を渡ると、丁度その橋の下を下っている所だった。
まだ半分までしか下っていないし、しかもこれからが難所の続くところである。
そこでちいちゃんが沈脱し、人間はレスキューされたけれど舟はそのまま見えなくなるくらい遠くまで流れていってしまった。


流されていくちいちゃんのカヤック、瀬が終わるまでこのまま流れていった


カヤック組の安否を気遣いながらも私たちはHOAまで戻って、服を着替えて暖かいコーヒーを飲みながら一服。
そしてゴール地点へ様子を見に行く。
カヤック組がヘロヘロになって戻ってきたのは、私たちがゴール地点までやってきてから30分以上経ってからだった。
3人が途中リタイアしたけれど、何事も無く戻ってこれたのは幸いだった。


無事に帰ってきたカヤック組の皆さん


増水した川はやっぱりラフトで下るのが一番。
来春は是非、雪解け水で増水した赤岩青厳峡をラフトで下ってみたいものである。
 

(当日12:00沙流川水位変化 幌毛志橋:57.10→57.40m)

この時のラフトツアーの動画 



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