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理想の川旅

歴舟川の河原(7月2日~3日)

今回の歴舟川の川旅が、私にとって今シーズン初の川下りとなる。
石鎚山での滑落による肋骨骨折、それがようやく治ったと思ったら、今度はランニング中の転倒により膝を酷く擦りむき、その影響でカヌーには全く乗っていなかったのだ。

そんな状況なのに川は三日前の雨で増水中。
2年前の川旅の時も雨が降ってかなり増水していたけれど、大樹橋の水位観測所のデータが見られなくなっていてその時との比較ができない。
現地の河川カメラの映像を見てドキドキしながら川旅当日を迎えた。

途中、濁流と化した戸蔦別川や、増水して流れの早くなっている札内川の様子を見て更に不安が増してくる。
しかし、現地までやって来て見た歴舟川は、水は多いものの茶色い濁りも取れて、下るのに特に問題は無さそうでホッとした。

歴舟川の川旅
ふるさと大橋の上から見た川の様子


今回の川旅のメンバーは2年前と同じだけど、かみさんは不参加。
それと、歴舟川の川旅を一番楽しみにしているビンバさんは、昨年に一昨年と2年連続で体調不良で欠席し、今年こそはと張り切っていたのに、今度は車の不調により突然の欠席。
3年連続で歴舟に見放された感じで、気の毒でしょうがない。

歴舟川の川旅
I上さんのカヤックにも必要なものが全て積み込まれている


河口へ車を回し戻ってきた時には既にお昼。
気温は23度くらいだけれど陽射しが強く、日陰のない河原で昼食にするのは辛そうなので、大樹橋の下でお昼を食べてからスタートすることにした。

歴舟川の川旅
川旅の始まりに心も高ぶる


そうして皆は楽しそうに、私は少し不安を感じながら、流れの中に漕ぎ出した。
水の透明度はないけれど、茶色に濁っていないだけで気分が違う。

大樹橋を出ると直ぐに瀬が始まる。
今年始めての川下りでも、パドリングの感覚は直ぐに思い出す。
ただ、漕ぐ力が弱っているのを実感する。
波の中で舟をコントロールしようと思っても、力が弱くて機敏な進路変更ができない。
それでも、そんなに大きな波ではないので何とか下ることができる。

歴舟川の川旅
最初の瀬は、これくらいの水量のほうが下りやすい


ふるさと大橋の手前で右岸から左岸へと流れが変わる場所があり、そこが結構な波の立つ瀬になっていた。
流れに乗って下っていけば特に問題のない瀬だけれど、大きな波を超える度にカヌーの中に水が入ってくる。
でも、こんな良い天気の時に歴舟川の水を浴びるのは気持ちの良いものだ。

歴舟川の川旅
水を浴びるのが心地よい


そこから暫く下っていくと、この区間で一番大きな瀬が待ち構えている。
先頭を漕ぐカヤックのI上さんが、臆することもなくその瀬の中に突っ込んでいく。
水量が多い時に助けられるのは、その大波を避けて下れるチキンルートができることだ。
後続メンバーは、その大波を横目で眺めながら安全に下っていく。

歴舟川の川旅
大きな荷物をSUPに乗せて余裕で大波の横を漕ぎ抜けるNもとさん


その瀬が終わると野営地探しが始まる。
川が大きく分流しているところで、その中州に一旦上陸した。
広々とした河原に流木は疎ら。
野営適地とは言えないけれど、そもそも中洲の河原なので野営の対象とはならない。
私たちは左の分流を下ることにした。

歴舟川の川旅
樹木も生える大きな河原だけれど中洲になっている、私たちは左の分流へ


家に帰ってから過去の記録を調べてみたところ、ここに分流ができていることは珍しく、大体は本流は右岸側を流れていて、その辺りでテントを張ったことも何度かあった。

二つの分流が再び合流する辺りで、I上さんが左岸に上陸。
そんなに広い河原ではないけれど、I上さんはそこが結構気に入った様子だ。
I上さんの野営地選びの基準は、まず第一に人工物が見えないところ、そして二番目に焚き火用の流木が沢山有ること、三番目がロケーションといったところだろうか。

歴舟川の川旅
野営適地そうな川原を偵察するが


少し狭いけれど、一番目と二番目の条件は完全に満たしていそうだ。
と思ったら、川の中の流木に引っかかっているブルーシートが目障りだと言う。
そこまで拘るか!って感じだ。

歴舟川の川旅
流木に引っかかっているブルーシートも確かに人工物か


ただ、三番目のロケーションが今一。
それはNもとさんも感じていたようだ。
歴舟川独特の空の広さが感じられないし、夕日が沈む方向が開けていないのもマイナス点。
結局、その河原は諦めて先に進むことにした。

歴舟川の川旅
野営地を探して更に下り続ける


歴舟川での野営地探しでは、条件が揃わなくて先に進むことにしても、その先にもっと良い場所があるとは限らない。
何時ものことだけれど、なかなか難しい決断を迫られるのである。
でも、過去を振り返ってもその先で野営地が見つからずに途方に暮れたという経験はなく、大体は何とかなるのだ。
今回も、そこから800m程下ったところで、ほぼ理想に近い河原を見つけたのである。



午後1時半に今回の野営地に到着。
歴舟川の河原キャンプでは、まず最初に焚き火用の流木集めが始まるのだけれど、今回はその必要は無し。
大量の流木が集まっている河原なので、そこから適当な大きさの流木を引っ張り出せば済むのである。

そこで、流木集めの代わりに最初に取り掛かったのは、物干し場作り。
川下りでは装備も含めて干すものが沢山有るのだ。
枝の付いたままで倒れていた1本の流木を、他の流木を支えにして持ち上げて物干し完成。

歴舟川の川旅
一本の流木を持ち上げて物干しに


着替えを済ませて次はテントの設営に取り掛かろうとしたら、I上さんとPOSさんが早くもビールを飲み始めていた。
テントも張って一段落してからビールを飲んだ方が落ち着けるのだけれど、その様子を見るともう我慢していられない。
1人で黙々とテントを張っていたNもとさんが張り終える頃には、POSさんは既に2本目を空にしていた。

各々が自分の好きな場所にテントを設営。
カヤックのI上さんとサップのNもとさんは、荷物をあまり積めないのでツェルトを張っていた。
カナディアンの私とPOSさんは制限がないので、大きめのソロテントだ。

歴舟川の川旅
I上さんのツェルトは迷彩状態だ


テントを張り終えると、次は焚き火である。
これはもうI上さんの独壇場だ。
林業に関係する仕事をしているので、林業が悪者と思われないように漁業者の邪魔者である流木をせっせと燃やしたいとの崇高な目的を持って焚き火をしているらしいが、どう見てもただの焚き火好きなおじさんにしか見えない。

投入する流木も太いものばかり。
キャンプファイヤーの様な焚き火である。
かんかん照りの河原で大きな炎を上げる焚き火。

歴舟川の川旅
歴舟川でなければこんな焚き火はできない


椅子代わりになる太い流木を焚き火の前に配置していたけれど、そんなキャンプファイヤーのような焚き火は想定していなかった。
とてもその流木には座っていられないので、直ぐに後ろにずらすことになる。

歴舟川の川旅
流木は後ろにいくらでも転がっているので好きなだけ燃やすことができる


皆がソーセージを持ってきていたので、伸縮式のバーベキュー用フォークを使ってそれを焚き火で焼く。
フォークも人数分の4本が揃っている。
しかし、そのフォークを目一杯長くしても、焚き火の熱が強すぎてじっくりと焼いていられない。
結局は、調理用の小焚き火でソーセージを焼くことになる。

歴舟川の川旅
ソーセージを焼くだけなら、これくらいの焚き火で十分


私は普段のキャンプでは350の缶ビール2本で十分。
今回はワインも1本持ってきたので缶ビールは3本で良いだろうと思っていたが、この素晴らしいビール日和に、美味しい食べ物が次々に出てきては、全く足りなかった。
POSさんは5本も持ってきたのに、既に無くなりかけている。
それでも、他にもワインを持ってきている人がいて、全て白ワインだったけれど3本あるし、それが無くなれば少しだけれどウイスキーと日本酒もあるので、最悪の事態は避けられそうだ。

歴舟川の川旅
物干し流木


ここの河原で唯一不満なのは釣りのポイントが無いことである。
その点では、最初にI上さんが目を付けた河原のほうが、直ぐ前が深みになっていて、なんとなく大きなニジマスが潜んでいそうな雰囲気があった。
でも、釣りは川旅の中のちょっとしたオプションに過ぎないので、これだけビールを飲んでしまうと、釣りはもうどうでも良くなっていた。

歴舟川の川旅
残念ながら野営地の近くに魚が釣れそうなポイントはなかった


直ぐ近くからタンチョウの鳴き声が聞こえてくる。
姿は見えないけれど、河畔林の向こうの牧草畑にいるようだ。
結局今回の川旅ではタンチョウの姿は見られないままに終わってしまった。

歴舟川の川旅
午後6時ころになってようやく涼しくなってきたので流木を再び積み上げる


日が傾いてくるとようやく涼しい風が吹いてきた。
そうなるとI上さんがますます張り切って、焚き火の上に更に流木を積み上げる。

歴舟川の川旅
結局ここまで積み上げた


後はもう夕日を楽しむだけである。
今日は日中だけが晴れの予報になってたいけれど、この時間でもまだ青空が残っている。
西の空には少し雲が広がっているけれど、その雲の間から夕日も見られそうだ。

歴舟川の川旅
食事をしながらサンセットショーを楽しむ


歴舟川での野営地を決める時、夕日が沈む方向も重要なファクターとなる。
今回は日が沈む方向に日高山脈の山々が連なり、ほぼ理想的な場所だった。
欲を言えばその手前に歴舟川が流れ、夕日がその川面を赤く染め上げればもう完璧である。

残念ながら私達のサイトの前には河原が広がっているだけ。
しょうがないので川が見える場所まで歩いていって写真を撮る。

歴舟川の川旅
日高山脈に夕日が沈んでいく


川面は綺麗に染まってはくれなかったけれど、西の空に広がっていた雲を夕日が真っ赤に染め上げてくれた。
夕陽そのものよりも、こんな風に雲が赤く染まる風景の方が私は好きである。

歴舟川の川旅
日が沈んでも雲は赤く染まったまま


2年前の同じメンバーでの川旅では夕陽は見られなかったので、ようやく歴舟川キャンプの真髄を皆で楽しむことができた気がする。
そして、2年前は日没後は川霧に包まれてしまったけれど、今回は星空も広がり最高の夜となる。

歴舟川の川旅
焚き火の前で記念撮影


西の空の残照が消える頃、そこには細い三日月が浮かんでいた。
I上焚き火からは相変わらず豪快な炎が上がり続ける。
ワイン3本もきれいに空にして、最後のウイスキーに手を付けること無く、それぞれのテントへと潜り込んだ。

歴舟川の川旅
楽しい夜が更けていく



翌朝、午前3時半過ぎに目を覚ますと既にテントの中は明るくなっていた。
もしかしたら晴れているのかなと思ってテントのファスナーを少しだけ開けて外を覗くと、予想外の青空が広がり東の空が赤く染まっていた。
昨日の夕日もそうだけれど、今日の朝日も、数日前の天気予報を見てほぼ諦めていたので、これは嬉しかった。

歴舟川の川旅
歴舟川の朝


誰か起きているかなと反対側のファスナーを開けて様子を窺うと、POSさんが既に焚き火を始めていた。
昨晩は皆より早くテントに入った分、朝起きるのも早かったようだ。
私も起き出すと、I上さんもNもとさんも直ぐに起きてくる。
時間はまだ午前4時前なのに、キャンプの朝は皆早起きだ。

焚き火の面倒を見るI上さんも、昨日の様に太い流木を投入すること無く、手頃な太さの流木だけを燃やしている。
最後に完全に燃やし尽くすことまで計算しているのだろう。
焚き火のことはI上さんに任せておけば間違いはない。

歴舟川の川旅
朝から焚き火の炎が上がる


お湯を沸かしてコーヒーを入れる。
おめざはNもとさんが用意してくれたマシュマロ。
今朝の焚き火の大きさならば、伸縮式フォークで安心してマシュマロを焼くことができる。

朝食はPOSさんが作る豚汁とうどん。
豚汁は前日のメニューに入っていたけれど、豚汁を作る前にすでに皆は腹一杯になっていたので、そのまま朝のメニューに変わったのである。

歴舟川の川旅
マシュマロを焼きながらコーヒータイム


焚き火が燃え尽きそうになってきた頃、焼き芋用にサツマイモを持ってきたことを思い出した。
慌てて熾を掘り起こして、その中にアルミホイルにくるんだサツマイモを埋める。
そのまま、撤収作業をしていて、その途中に芋を埋めていたことを思い出し、掘り起こして竹串をさしてみる。
どれくらい時間が経っていたのかは分からないが、丁度良い焼き具合になっていた。
これは河口に着いてからのおやつにすることにした。

歴舟川の川旅
焼き芋を焼くにはちょうど良い熾ができている


そうして各自撤収を終えて、焚き火も完全に燃やし尽くした。
隣の流木の山は心持ち小さくなった様に見えるけれど、まだ何日も焚き火を楽しめるだけの量が残っていた。

歴舟川の川旅
焚き火もきれいに燃やし尽くして片付け完了


既に太陽は高く昇っていて、川下り用の装備に着替えると暑くてたまらない。
今日の大樹町の予想最高気温は30度なのだ。
川下り前にまずは川に入ってクールダウン。

歴舟川の川旅
気温は既に25度近くまで上がっていて体を濡らしてちょうど良いくらいだ


川の水位は昨日より少し下がった程度だが、透明度はかなり回復してきている。
そうして午前7時半に河口を目指して漕ぎ出した。

歴舟川の川旅
野営地の河原を出発


増水気味の川の流れは早い。
あっという間に河口に着いてしまいそうなので、なるべくゆっくりと下ろうとするが、カヌーを浮かべているだけでどんどんと進んでいってしまう。

テントを張りたくなるような河原がまだ沢山有る。
次回はここにテントを張ろう、なんて考えていても、一年も経てば川の様子は一変してしまうので、また新たに探さなければならなくなる。
それも歴舟川の魅力の一つとも言えるだろう。

歴舟川の川旅
ムシトリナデシコの群落が花を咲かせる河原での野営も楽しそうだ


下るルートの選択は先頭のI上さんに任せていた。
途中の分流で右側に進んでいく。
あまり見たことのない風景に、そこが初めてか、あるいは久しぶりに下る流れであることが分かった。
そして間もなく、真正面に歴舟橋の姿が見えてきた。

歴舟川の川旅
I上さんは右の分流に進んだが見慣れない風景が広がっていた。


最近は、左岸側から歴舟橋に近づき、そのまま歴舟橋の直ぐ上流を橋に並行するように右岸側へ向かい、そして右岸ギリギリで橋の下を通過する流れになっていた。
右岸側から橋に近づいたのはかなり昔のような気がする。
後で古い記録を調べてみたところ、2008年に同じルートを下っていたけれど、その時は途中から流れが左岸側に向かい、橋の一番左側を通過していた。
下ったコースを何年にも渡って記録していると、歴舟川の河道の変遷が分かってなかなか面白い。

歴舟川の川旅
歴舟橋上下流の今までに下ったルート、紫の線が今回


橋の手前で左側からの分流と合流して、橋の中央付近を通過した。
ここ数年は歴舟橋の通過が一つの難所にもなっていたけれど、今回は特に危険な場所もなく、すんなりと通り抜けることができた。

歴舟川の川旅
通過しやすくなった歴舟橋を下流から


それまでの広かった空が、歴舟橋を過ぎると更に広くなった錯覚にとらわれる。
真っ青な空には刷毛で掃いたような白い雲が浮かび、何とも美しい。

歴舟川の川旅
空が広い


後ろを振り返ると遠くに日高山脈が見えている。
歴舟橋を過ぎると分流の選択に迷うことが多いけれど、今日は水量が多いので、どの分流を選んでも問題はない。

歴舟川の川旅
日高山脈の山の連なりが後ろに見える


河口の2キロくらい手前から、早くも海が見えてくる。
そのまま一気に海を目指して漕ぎ下るところだけれど、一つ問題があった。
何時も河原へ車を乗り入れている道が、本流の流れが変わって流されてしまったのだ。
その道に変わって新しい道が付けられていたけれど、川からはかなり遠くなってしまう。

歴舟川の川旅
左手前方遠くに水平線が見えている


車はその近くに停めてあったので、まずは道が流された跡にカヌーを付けて積んでいた荷物を全て下ろし、身軽になった舟で河口を目指す。
その河口の様子も去年とは全く違っていた。
河口の手前にあった大きなプールは無くなり、本流がそのまま真っすぐに太平洋へと流れ出しているのだ。
カヌーに乗ったままできるだけ河口近くまで下りたいところだけれど、この状況ではそれも難しそうだ。

歴舟川の川旅
途中で荷物を降ろして身軽になった舟で河口を目指す


河口のかなり手前でカヌーから降りて、小さな中洲になっている部分まで歩いて渡って、そこを今回の川旅のゴールとすることにした。
中洲までは結構距離があって流れも早い。
それなのに、華奢なNもとさんが一番早く川を渡っていくのには驚かされた。

歴舟川の川旅
最後は歩いて河口の中洲に上陸


そうして午前9時丁度に歴舟川の河口に立った。
風もなく、海も穏やかで、こんな状況で河口に立てるのは珍しい。

歴舟川の川旅
最高のコンディションで河口に到達


日高山脈の南の端まではっきりと見えていた。
最高の川旅の締めくくりである。

歴舟川の川旅
最高の笑顔


ここで皆で焼き芋を食べる。
我ながら絶妙の焼き具合で、美味しい焼き芋だった。
そして暫くの間、小さな中洲で旅の余韻を楽しむ。

歴舟川の川旅
絶品の焼き具合だ


そんな幸せな時間の後に待っているのは、車で入れる場所まで約200mのカヌーの運搬。
次の川旅までの間に、この河口部の流れが少しでも変わってくれることを期待するのであった。

歴舟川の川旅
河口まで下った代償がこれ


7月2日午前12時 尾田観測所水位 102.72m 
7月3日午前7時 尾田観測所水位 102.68m 


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