トップページ > 山登り > 雪山遊び

キロロ989峰(2016/1/3)

恐怖のスノーブリッジ


年が明けての山スキー始めはキロロのバックカントリーへ行くこととなった。
キロロでは今シーズンから、スキー場管理エリア外を滑る場合は登山計画書を提出した上で指定したゲートから出るようなルールが作られている。
それがどんな様子なのか確かめる意味もあった。

集まったのは私達を含めて7名。
S藤さんが代表して登山計画書を書いてくれて、それを提出。
すると、リフト券を購入しなければならないとのことで、各自が350円でリフト1回券を購入。
それでようやく計画書を受け付けてもらえて赤いリボンを渡され、それをザックに取り付ける。

コース外に出るゲート一番下のゲートはファミリーリフトの降り口にあるので、そこまでリフトに乗らなければならない。
シールを付けて登れば直ぐの場所なのに、何だか馬鹿らしい。
そして、シールを貼ったままでリフトに乗ると、降りる時に板が滑らないので、危うくリフトを止めてしまうところだった。
シールを貼ったスキーは、手に抱えてリフトに乗るのが正解である。

リフト降り場にいた係員の方からリボンとビーコンのチェックを受けて、これで晴れてコース外に出られるのである。
キロロマウンテンクラブのメンバー以外は9時を過ぎなければゲートを出られない事と、350円のリフト券を買わなければならないことが新たな制約と言えそうだが、この程度ならば皆が安全に山スキーを楽しむためには我慢しなければならないレベルだろう。

積雪がまだ少なく、余市川の沢は水面が殆んど見えている状況である。
そこに良い具合に太い倒木が倒れこんでいて、橋の替わりになっていた。
恐怖のスノーブリッジしかしその橋は、スキーを履いてギリギリで渡れるくらいの幅しかない。
先頭のI山さんが慎重にその橋を渡るが、渡りきったところで立ち止まってしまった。
そこがちょうど倒木の根元部分なので大きな落差になっているのだ。
スキーを履いたまま強引に滑り降りたところ、案の定、スキーが雪面に刺さって頭から転んでしまった。

それを見た後続メンバーは、皆スキーを抱えてスノーブリッジを渡る。
でも、それはそれで足元が不安定で、T津さんはブリッジの端を踏み抜いてしまい、大きくバランスを崩した。

スノーブリッジの水面からの高さは5m以上はありそうだ。
そこを立ったままで渡ると、実際には7m下に水面が見えるわけで、生きた心地がしない。
何とか無事に全員が渡りきったが、帰りにもう一度ここを渡らなければならないと考えるとウンザリしてしまう。


スノーブリッジは渡ったけれど こけた
渡った先にも難所が やっぱりこうなった

沢を渡る私達の先に大人数のパーティーが入っているようで、しっかりとしたトレースが付いている。
スノーブリッジを渡った後も、今度は違う沢沿いに登っていくことになる。

私達は今回992峰を目指していたが、そのトレースも同じ方向に向かっているようなので、ありがたく使わせてもらう。
しかし、このトレースが意味もなく沢を何度も横切っていて、その度にアップダウンを強いられる。
沢が完全に埋まっていれば、ルート取りにそれ程気を使う必要もないのだが、所々で沢が開いているので先頭を歩いている人も迷っているのかもしれない。
前回の大黒山に続いて、人のトレースを使いながらついつい文句を言いたくなる。

途中から沢が二股に分かれていた。
トレースはそこを左に向かっていて、T津さんとI山さんも躊躇わずにトレースの中を歩いていたが、S藤さんから「992峰になら右の沢から登った方が楽だよ」と声がかかる。
私のGPSに登録してある前回登った時のトラックも、確かに右の沢に向かっていた。


分かれ道
ここは右の沢を行くところだ

先を歩いているパーティーの姿も見えていて、彼らは992峰から続く尾根を一気に登り始めている。
距離的にはそれが最短ルートなのだけど、傾斜が急なので沢を詰めた方が楽なのは確かである。
私達のパーティーは半分以上が還暦越えのメンバーなので、少しでも楽な方を選択する事となった。

シーズン初ラッセルただし、そこから先はラッセルしながら登らなければならない。
積雪が少なくても、それとラッセルの深さは別物である。
場所によっては膝以上のラッセルを強いられるが、元々ラッセルするのは嫌いではない。
今シーズン初の本格的なラッセルで嬉しくなるが、汗はあまりかきたくないので適当なところで先頭を替わってもらう。

分岐地点で追いついてきた後ろのパーティーは、そのまま尾根ルートに向かったようだ。
沢の左手は992峰からの斜面で、右手には989峰の斜面が広がる。
ブッシュが多い992峰に比べて、989峰の斜面はブッシュがなくダケカンバの疎林も良い感じである。
私は989峰を滑る方が好きなので、I山さんが「右の方が良さそうですね」と言い始めたので、一も二も無く賛成した。


992峰の斜面
992峰側はブッシュが多い 989峰の疎林斜面

989峰へ登る989峰を1本滑ってから992峰へ登り返すことに決まった。
沢の源頭付近から右へ向きを変える。

先頭でラッセルしていたT津さんが意味もなく奇声を上げる。
ノートラックの真っ白な斜面を前にして、テンションが上がってきたみたいだ。
途中から降り始めた雪も全く気にならない様子である。

ダケカンバの密度が濃くなっていた標高950m付近から滑り降りる事にする。
誰も992峰のピークを踏む事など考えていない。

雪が小降りになると、992峰の山頂付近にも沢山の人影が見えていた。
一方、こちらの山は私達だけしかいない。
「もしも誰かがこっちに登ってきたら、その目の前を滑り降りてやろう」
誰かがそんな事を言っていたが、山スキーを趣味にする人は、大体がこんな事しか考えていないのである。


989峰を滑る
降り始めた雪を誰も気にしない

かみさんとT津さんの滑りT津さんから「無理して身体を捻らないこと」とアドバイスを受けて滑り始める。
殆んど直滑降のようなターンしかできないけれど、十分な浮遊感を味わえた。

登り返しの事を考えて途中で止まったのがちょっと失敗だった。
雪が深いのでスピードを出さないと上手くターンできないのである。
そこからもう一度滑っても、1ターンが限界なので、そのまま992峰に向かってトラバース気味に滑り降りた。

再びシールを貼って、992峰に登り返す。
私とかみさん、T津さんが途中まで登っても、後続メンバーが付いて来ない。
どうしたのかと思ったら、K原さんの金具が壊れてしまったらしい。
これ以上は登れないというので、再び皆のところまで滑り降りた。

壊れた金具ヒールのプラスチック部分が割れてしまっていた。
Y須賀さんが、針金やガムテープを使って、ブーツと金具を固定しようとしている。
怪我をするのも怖いけれど、こんな風に山の中で道具のトラブルに会うのも同じくらいのリスクがありそうだ。
もっと山の奥深くまで入っていたとしたら、その状態で下山するのは大変である。
針金などの修理道具も常に持ち歩かなければならないことを痛感した。

何とか補修して下山開始。
しかし、この応急処置もあまり役には立たず、結局K原さんは1本足で下まで滑り降りることとなったのである。


片足で滑るK原さん スキー場が見えるところまで降りてきた
一本足で滑るK原さん ようやくスキー場が見えてきた

細くなったスノーブリッジ時間をかけながらも何とか下まで降りてきて、その先で待ち構えていたのは例のスノーブリッジである。
嫌な事はさっさと済まそうと思って、一番最初にスノーブリッジの上によじ登る。
その瞬間、目の前の光景に愕然となった。
ただでさえ細かったスノーブリッジが、更に削り取られて、片足を置くのがやっとの幅のところまであったのだ。

「思わず後ずさりする」の表現どおりに、本当に1歩後ろに下がってしまう。
意を決して渡ろうとしたが、スキー靴だと足元が不安定で、再び引き返してしまう。
一番怖いのが細くなった部分である。
そこにそーっと足を乗せ、その後は一気に走りぬける。
「あ~っ!」と後ろから悲鳴が聞こえたが、何とか無事に渡る事ができた。

スキーは投げて渡す高いところが苦手な私なので、他の人は簡単に渡れるだろうと思って見ていると、そうでもないようだ。
皆も本気で怖がっていた。
スキーを持ったまま渡るのは無理という事になって、皆のスキーを1本ずつ対岸まで投げて渡す。

かみさんが「絶対に渡れない」と言って泣き出すかと思って、他に渡れそうな場所がないか探してみたが、川の中を歩く以外に方法はなさそうだ。
そうして一人ずつ順番に渡り、かみさんも無事に渡りきった。
朝にここで足を踏み外していたT津さんが一番怖がって、最後に一人取り残された。
皆の声援を受け、バランスを崩しながらも最後は転がるようにスノーブリッジを渡った。

色々とあったけれど、一番最後に最大の難関が待ち受けるなか、とりあえずは全員無事に降りてこられて、得るものも多い山スキーとなったのである。

GPSトラック) 

スノーブリッジを渡るK原さん スノーブリッジを渡るT津さん
慎重に渡るK原さん 踊りながら渡るT津さん

ゲート9:25 - 989峰11:30 - トラブル後の下山開始12:30 - ゲート14:00 



戻る │ ページトップへ