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ペケレベツ岳(2018/03/27)

憧れの山の山頂に立つ

もっと早くに登ろうと思っていたのが、なかなかその機会がなく、眺めるだけに終わっていたペケレベツ岳。
私の故郷である清水町から眺める日高山脈の中でも、実家から真正面に見え、存在感も一番大きいのがペケレベツ岳なのだ。
登山道が整備されているので、無積雪期ならば簡単に登れるけれど、山の美しさを楽しむのならば冬に登るほうが良い。

3月下旬の天気の良い日を狙って出かける。
日勝トンネルの日高側入り口から日勝ピーク経由で山頂を目指す。
平日でも何時も車が停まっている日勝ピークだけれど、この日は他の車の姿はなかった。
午前8時半に駐車場をスタート。

まずは日勝ピークへの斜面を登っていく。
ところどころに硬いアイスバーンが露出していたが、風で飛ばされた雪が薄く張り付いているので意外と登りやすい。
それでもアイスバーンではスキーがスリップするので途中からスキーアイゼンを装着する。
今シーズン既に2回登っている労山熊見山の様子が気になる。


日勝ピークの北東斜面

労山熊見山


登るにしたがって、その向こうにウペペサンケ山からトムラウシ山、十勝岳連峰の真っ白な山の連なりが見えてくる。
その一番右側に見えるはずの東ヌプカウシヌプリと西ヌプカウシヌプリは、十勝平野に低く垂れ込めている霞に隠されていた。


ペケレベツ岳に向かうのには、日勝ピークの斜面を越えて南側に滑り降りなければならない。
そのためには、標高1445mの日勝ピークの山頂近くまで登る必要がある。

結局この日は駐車場から440mほど登って、標高1400m辺りでスキーのシールを剥がした。

日勝ピークの南斜面は殆ど滑ったことがなく、途中で広大なオープン斜面に出てきてビックリした。
もう少し上まで登っていれば、最初からこのオープン斜面を滑れていたのである。

しかし、今日の目的はあくまでもペケレベツ岳の登頂であって滑ることは二の次なのだ。


 

オープン斜面が終わってアカエゾマツの林間へと入っていく。
適度に空間が広がっているので、ここでもまだ滑りは楽しめる。

この先で沢を渡ってから、ペケレベツ岳への登りとなるのだが、この沢が結構な深さがある。
渡れそうな場所を探しながら滑り降りて、最終的に渡れそうな場所を見つけたのは標高1060m付近である。

苦労して登った分を、殆ど滑り降りてしまったことになる。
おまけに、帰りはここをまた登り返さなければならないのだ。
かみさんには、今日の登るルートのことをあまり説明していなかったので、かなり呆れていたようだ。


沢の底でシールを貼る

午前10時10分、沢の底でシールを貼って、ペケレベツ岳の稜線へと続く尾根を登っていく。
この沢まで降りてくるのにおよそ1時間半かかっていた。
他の人のコースタイムを見ていると日勝ピーク経由では3時間半くらいかかっているようなので、ここからまだ2時間近く登ることになる。

尾根上はアカエゾマツを主体とした適度な疎林になっていて、下山する時は滑りも楽しめそうだ。
陽射しが強いので、樹木の陰になっているところを選びながら登っていく。
日陰の部分はサラサラの雪だけれど、日の当たっているところの雪は融けてきている。


シールにこびりついた雪

そんな場所を何度も横断するうちに、スキーのシールに雪が付き始めた。
今時期の山スキーでは良くこんな事態に陥る。

最初のうちは、歩いている間にくっ付いた雪も剥がれ落ちていたのだが、次第にそれが落ちなくなってくる。

そうすると、雪だるまが転がりながら大きくなるように、シールに付く雪もどんどん増えてくるのである。
こうなると、足に重りをぶら下げて山を登っているようなものである。

体力の消耗も激しい。
たまらずに途中でスキーを脱いでシールワックスをたっぷりと塗りつけたが、効果は殆どなかった。


山頂目前、この辺りはつぼ足で登った

標高が上がってアイスバーンの雪面が現れると、逆に嬉しく感じてしまう。
これでようやく雪の重りから開放されるのである。

もう少しで稜線に出るところでスキーを外して、そこから先はつぼ足で登ることにする。
頂上も見えていた。

稜線上には雪庇ができていて、どの辺りまでが安全地帯なのか分からない。
しょうがないので、歩きづらいけれど樹木の生えているギリギリの所を登っていく。
所々で雪面が凍っているので、アイゼンくらいは用意しておきたかった。

そうして午前11時45分、ついに標高1532mのペケレベツ岳山頂に到着。
そこに登った瞬間に一気に視界が広がり、目の前に十勝平野が現れる。
眼下には故郷清水の町並みも見えている。


何時も見上げていた山の頂上に、とうとう立つことができたのである。
過去の色々な山の登頂の瞬間でこれほど感動したことは無かった気がする。

山頂からは360度の展望を楽しめる。
ただ、残念なことに十勝岳連峰などの山の連なりは、山頂部分だけが見事に隠されてしまっていた。
原因は多分、PM2.5による霞である。
昨日も発生していたPM2.5が再び上空に流れ込んできたようである。



山頂は隠されていても視界は十分にあるので不満は無かった。
ペケレベツ岳山頂からの展望をひとしきり楽しんで下山開始。

稜線の雪庇の張り出し具合も確認できて、その先端に近づきさえしなければ心配は無さそうだ。
ペケレベツ岳の十勝側、東斜面もスキーで滑り降りることができる。

しかし、かなりの急斜面だと聞いていた。
今回はその東斜面の状況を見るのも目的の一つだった。
標高1450m付近に雪庇のできていない場所があって、多分そこが東斜面へのドロップポイントになるのだろう。
恐る恐る覗き込んだけれど、そこもやっぱり急斜面だった。
何時かは滑ってみようと考えていた東斜面だけれど、それを見て気が変わった。
ペケレベツ岳は山頂に立っただけでもう十分である。


ペケレベツ山頂直下の東斜面、さすがにこの付近は急すぎる


スキーをデポしてあった場所まで降りてきて、そこから先は一気に滑り降りられる。

最初の方こそアイスバーンだったけれど、途中で素敵なオープン斜面を見つけてそこを一滑り。
斜度もそんなに急ではなく雪質も良くて、思わず笑みがこぼれる。

しかし、楽しいのはそこだけだった。
その下もツリーランを楽しめそうな疎林が続いているのだが、雪質が酷かった。

ただのザラメ雪ではなく完全なストップ雪なのである。
直滑降で滑っていても突然スキーが止まり、頭から転びそうになる。
かみさんは両足を踏ん張りながら滑っていて、ここで相当参ったようだ。


快適な斜面に見えるがストップ雪に苦しめられた


それでも、途中で昼の休憩を途中で挟んで、沢の横断ポイントまで降りてきた。

ここからの登りでペケレベツ岳への登りの様にシールに雪が付いていたら、途中で歩く体力が無くなり遭難していたかもしれない。
幸い、完全に溶けたザラメ上の雪はシールに付くことも無く、スキーの上に雪が乗った時に少し重たく感じる程度で、登るのに支障は無かった。

1時間弱で日勝ピークの斜面まで戻ってきた。
帰りは無駄な登りをしないように途中からトラバースしたのだけれど、それでも最初に登った時より30mくらい低いくらいで大して変わりは無い。

最後の日勝ピーク北東斜面の滑り。
ガリガリ雪なのか、ザラメ雪なのか、ストップ雪なのか。
いずれにせよ足への負担が大きいのは確かである。
しかし、滑ってみるとこれがなかなか滑りやすい雪だった。


表面に薄く張り付いた雪はクラストしていなく、その下の固い雪面も表面が適度に融けてきていて、滑っていてもガリガリと耳障りな音はしない。
最初は恐る恐る滑っていたけれど、その後は誰も滑っていない広大な斜面を大きなターンを描いて思いっきり滑ることができた。

それでもかみさんはいつもの小回りターンで、太ももの筋肉も限界に近づいていたようだ。
やっとの思いで、午後2時10分駐車場まで滑り降りてきた。

私もかみさんも疲れ切っていたけれど、充実感の大きいペケレベツ初登頂だったのである。



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