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朱鞠内湖の魅力(前編)

朱鞠内湖畔キャンプ場(6月18日~19日)

今年最初に幌加内を訪れたのは2月の初め。記録的な大雪に見舞われた幌加内は深い雪に埋もれていた。
一時期、それが今年の蕎麦の栽培に影響が出るかもしれないとの話が出ていたが、4月5月の気温が高かったので幌加内の根雪終日はそんなに遅くならなかったはずである。


作付けが遅れていそうな日本一の広さの蕎麦畑

しかし、その時以来久しぶりに訪れた幌加内の広大な蕎麦畑は、まだ耕されていないところも目立ち、種まきも遅れている様子だ。

今回は八右衛門で蕎麦を食べようと思っていたが、開店時間前だったので2月に来た時と同じ雪月花に入る。
ここの蕎麦も美味しいのだけれど、相変わらず切り方が下手なのか太さがバラバラで、盛りも少ない気がする。

時間も早かったので、キャンプ場入りする前に久しぶりに笹の墓標展示館にも寄り道する。
ここには、雨竜ダムや深名線鉄道工事におけるタコ部屋労働、朝鮮人強制労働の歴史が展示されている。


笹の墓標展示館(光顕寺)

朱鞠内湖の風景を楽しむ前に、過去の暗い歴史を知っておくことも必要だろう。
以前に訪れた時よりも、内部も周辺も随分と整備されていた。
このような施設は、管理の手間も回らず次第に寂れていくのが一般的なのだけれど、良いことである。

キャンプ場に到着すると、私たちがカヌーを積んでいるのを見て受付のおじさんが「湖畔のサイトが良いですよね。今は全部埋まっているけれど、第3サイトの手前にテントを張っている方は今日で帰るので、そろそろ空くと思います。」と丁寧に教えてくれた。
去年の5月下旬にキャンプした時と同じサイトである。

先客は丁度撤収しているところで、挨拶をすると「ここ空きますから」と言ってくれた。
しかし、その横で待っていると撤収を急がせることになってしまいそうなので、私たちはカヌーだけ先に下して湖に漕ぎ出す。


我が家のテントサイト

家を出てここまで来る途中はずーっと曇り空で、途中の新十津川付近では霧雨も降り始めるほど。
朱鞠内湖までやって来ると雨は止んだけれど、相変わらずの曇り空だ。
それでも、風は殆ど吹いていなくて、湖面も凪いでいるので良い雰囲気である。

先客が帰っていったところで岸に戻り、自分たちのテントを設営する。
そこで直ぐにビールを飲むと動くのが面倒になってしまうので、まずは広いキャンプ場の中を一回りすることにした。

去年ここに泊まった時は、丁度良い大きさのウドを収穫していたので、かみさんはそれが気になってしょうがないようだ。


奥の方に第3サイトの湖畔サイトが見えている


マイヅルソウが丁度花の盛りを迎えていて、ハクサンチドリも所々で花を咲かせていた。
オオバナノエンレイソウは既に時期を過ぎていたが、それでもまだ綺麗な花の残っている株がある。

美味しそうなフキも生えていて、かみさんがそれを収穫する。
フキならば、どこに生えているのも同じだと思うのだが、かみさんの目には違って見えるらしい。


マイヅルソウ

ハクサンチドリ


去年採った場所のウドは既に大きくなりすぎているけれど、芽の部分だけならば、大きくなっても天ぷらで食べることができる。
場内を歩いていると他にも結構ウドが生えていることに気が付いた。


コシアブラの葉3態

そして、今回のキャンプで一番の大きな収穫と言えるのは、コシアブラの木を見つけたことである。

本州のキャンパーからコシアブラはとても美味しいと何度も聞いていて、北海道にも自生しているらしいのだが、まだ実物を見たことがなかった。
かみさんが「これってコシアブラじゃない?」と手に取ったものは。正に山菜図鑑に載っているコシアブラの葉そのものだった。

既に葉が開きすぎて食用にはならないけれど、コシアブラの木を覚えられたのは大収穫である。
一度覚えると、歩いていても直ぐに見つけられるようになり、場内にもコシアブラが結構生えていることが分かった。


林床に密生しているミズナラの幼木

これで来年は、もっと早い時期にきて山菜キャンプを楽しめそうである。

場内を歩いていて気になるのは、自然に芽生えたミズナラやシラカバ、トドマツなどがそこら中に密生していることである。

そのうちに刈るのかなと思って昔から見てきたが、放置されたままで次第に大きく育ってきている。

私たちが昔テントを張って快適なキャンプを楽しんだ場所は、もう近づくことさえできない。
林間に作られていたテント床も、その幾つかが使えなくなってきている。
そこにテントを張る人は殆どいないと言うことなのだろうが、せっかくの施設が消えていくのがとてももったいない気がするのだ。



散歩から戻って、ここでビールを開ける。
やっぱり、少し運動した後の方がビールは美味しい。


これは第2サイトの湖畔部分

私がフェイスブックにアップした写真を見て、知り合いから「第3サイトの先端にテントを張っている人は、多分一か月以上滞在している人です」と教えてくれた。
教えてくれた方も、本州から毎年朱鞠内湖までやってきて長期滞在されていて、去年出会ったらしい。
ちょっと変わったタープを使っているので、写真に小さく写っているだけで直ぐに分かったみたいだ。

朱鞠内湖キャンプ場の広いサイトの中で、湖に接するようにテントを張れるのは、その長期滞在者の方と私たちがテントを張っているサイトの他に、第2サイトの1か所の僅か3か所しかない。
カヌーを持っていなくても、大体のキャンパーは湖畔にテントを張りたがるので、競争率は高い。
最近は利用者も増えているようなので、平日に来ない限りは湖畔サイトの確保は難しいだろう。
3か所のうち1か所が一か月も押さえられているとなると尚更である。


水の上で遊ぶのならばライフジャケットは是非着て欲しい

第2サイトの湖畔にいるキャンパーはSUPを持って来ていた。
去年もSUPに乗っているキャンパーを見ていたし、カヌークラブのメンバーの中にもSUPで川を下る人もいて、かなり普及してきているようだ。

良く見ると、第2サイトのキャンパーはライフジャケットを着ないでSUPに乗っていた。
SUP自体に浮力があり、人間とはリーシュコードで繋がっているので、ライフジャケットは必要ないと考えているのだろうが、水上で遊ぶ人間にとってライフジャケットはどんな状況であろうとも必須装備である。

意識が低すぎるとしか言いようがないし、売っているショップにも問題があるような気がする。
SUPを初めて買うような客には、ライフジャケットも一緒に買うように勧めるくらいはして欲しいものだ。


かみさんも湖ならば真っすぐに漕げるようになってきた

風は弱いけれど、ちょっとしたタイミングで湖面にさざ波が広がったりべた凪になったりと目まぐるしく、状況が変わる。
そんな様子を見ながら、交代で湖に漕ぎだす。

ようやく青空も覗くようになってきた。
夕方になると湖面も静かになってくる。
朱鞠内湖では、日中に風が吹いていても、朝夕には静かな湖面が広がることが多い。
朱鞠内湖キャンプで一番楽しい時間でもある。

当初の予定では、今回は十勝の方にキャンプに行くつもりだった。
しかし、十勝の天気はパッとしないみたいなので、今朝になってキャンプは延期にしようと考えたが、かみさんが「朱鞠内湖の方は天気が良くなりそうよ」と言うので、出かけてきたのである。
この選択は大正解だったようだ。


湖面に映るシラカバの風景が印象的である


夕食はポトフとチーズフォンデュ。
夕食を終えても、夏至を3日後に控えて、辺りはまだまだ明るいままだ。

西日が射してきて、対岸の森を明るく照らし出す。
鏡のようになった湖面にその森が映り込む。
そんな風景を目の前にして、カヌーに乗らないわけにはいかない。


べた凪の時に見られる朱鞠内湖キャンプ場のお馴染みの風景



湖上から眺める夕陽

キャンプ場からは夕日は直接見られないが、湖上に漕ぎだせばそれが見られる。
丁度、森の中に夕日が沈んでいくところだった。

テントに戻って、焚火をしながら次第に暗くなっていく湖の様子を楽しむ。
頭上を鳥が飛びまわっていたが、何となく飛び方がおかしい。
もしかしたらコウモリ?

近くまで飛んできたところで確認したら、確かにバットマンマークと同じ形をしていた。
洞窟以外の場所で飛んでいるコウモリを見たのは生まれて初めて。
色々なことを経験させてくれる朱鞠内湖である。


夜の焚火風景

夜中にガサガサと音がして目が覚めた。
そのうちに、コリコリと骨をかじるような音が聞こえてきた。
もしかしたら、キツネにゴミを引っ張り出されたのかもしれない。

何時もならば、寝る時はゴミは車の中に入れるのだけれど、油断してテントの入り口に置いたままにしていたのだ。

テントの中から「こらっ!」と声を出したが、コリコリと言う音は相変わらず続いている。
「キツネじゃないのだろうか?だとしたら、何の音なのだろう?」
気味悪く思いながらシュラフから抜け出してテントの入り口を開けると、目の前でキツネがポトフに使った鳥の骨をかじっているところだった。

もう一度「こらっ!」と叱りつけたが、逃げようともしない。
私がテントから出て追いかけると、「食事中なのにな~」とでも言いたげな様子で逃げていった。
多分、キャンパーからエサを貰っているので、人間を恐れなくなっているのだろう。
困ったものである。




低い雲が垂れ込める朱鞠内湖の朝

そんなこともあって眠れずにいると、テントの中が次第に明るくなってきた。
そのうちに、ツツドリが良く響く声で鳴き始めた。
他の野鳥も一斉に囀り始める。
時計を見るとまだ午前4時前である。

今日は早朝カヌー散歩に出かけるつもりでいたので、これ以上寝るのは諦めて起き出すことにする。
日の出の風景を楽しみにしていたのに、湖は低く垂れこめた雲に覆われていた。
しかし、東の空の低いところは明るくなっていて、時間が経てばこの雲も消えてなくなりそうである。

落としたコーヒーを保温ポットに入れ、朝の5時15分に湖に漕ぎだす。
既に朝日は高く昇っている時間だけれど、その姿は全く見えない。
湖は完全にモノトーンの世界である
湖面は重たく静まり返り、水がねっとりとパドルに纏わり付いてくる。


静まり返った湖に漕ぎだす



この立ち枯れた樹木を目標に漕ぎ進む

思案島の更に先の北大島の近く、真っ黒な雲の下で少しだけ明るくなったところに立ち枯れた樹木がシルエットとなって並んでいるのが見えている。
今日は遠くまで行ってみるつもりだったので、とりあえずはそこを目標にして漕いでいく。

藤原島を過ぎるあたりから微風が吹き始め、湖面にさざ波が立ち始める。
そうなると、湖の風景もつまらないものに変わってしまう。

そこに現れたのが二股の木である。
湖面から突き出た枯木は、かなり昔の朱鞠内湖のパンフレットにも使われていた気がする。
湖の水位が高いので2本の木に見えるが、下の方では1本になっているのである。

ここまで来たのは11年ぶりくらいになるが、すっかり様子が変わってしまっていた。
以前より痩せてしまったようだ。
水の中に沈んだり出たり、凍ったり融けたりを毎年繰り返していれば、こうなるのも無理はない。


すっかりみすぼらしくなった二股の木

存在感のあった11年前の二股の木


湖面のさざ波が全く治まりそうにないので、北大島に上陸してそこで朝のコーヒーを飲むことにする。
そこには変わった石が沢山転がっていて、石ころ好きな私たち夫婦は直ぐにそれを拾い集め始める。


北大島で石ころ拾い

そんなことをしているうちに、以前にもここに上陸して石を拾ったことを思い出した。
後で調べてみると、我が家にある木の化石(珪化木)は11年前にここで拾ったものだった。
今回もまた、チャートや珪化木を大量に拾って持ち帰ることとなる。

遠くから見えていた枯木の林は、北大島から伸びているものだった。
家に帰ってから昔の写真を見てみると、これらの枯れ木はまだ青々とした葉を付けていて、北大島とも完全に繋がっていたのである。

朱鞠内湖の水は、最近は常に満水状態に維持されているので、その影響で根が水に浸かって枯れたのだろう。
波に洗われて土も流され、今は水中から立ち上がっているように見えるのである。


遠くから見えていた立ち枯れた樹木の正体がこれだ


島で1時間半近く時間を過ごしていると、ようやく雲が晴れ始めたので再び漕ぎ始める。
北大島を回り込んでもう少し先まで行ってみる。
そこには形の良い枯木が何本も湖上に立ち上がっていた。
その中には形の良い枯木もあり、すっかりやせ細った二股の木の代わりに、朱鞠内湖の新しいシンボルにでもなれそうな風格がある。
ただ、キャンプ場からここまでは3キロくらいあるので、簡単には見に来ることができないのが難である。


新しいシンボルになれるだろうか


昔はこの辺りにはもっと沢山の枯れ木があったような気がする。
それが次第に減りつつあることを思えば、せめて今の状態だけでももっと記録に留めておきたいものだ。


緑のレストランで美味しい朝食をいただく

8時半にキャンプ場に戻ってくる頃には、すっかり青空が広がっていた。
昨日の曇っている時から続いているエゾハルゼミの大合唱は、太陽の日差しを受けて、更に勢いを増したようだ。

エゾハルゼミは元気になっても、暑いのが苦手な私たち夫婦なので、その陽射しが鬱陶しく感じる。
木陰に移動して遅い朝食をとる。
昨日の夕食の残りのポトフとチーズフォンデュが、一手間加えられて食卓に並ぶ。
緑に包まれた中で食べる朝食は、一流レストランに勝るとも劣らない。

天気がパッとしなければ1泊で帰るつもりでいたけれど、この青空を見ると帰るのは勿体なさ過ぎる。
明日は雨の予報だけれど、朝までは晴れそうなので、もう1泊していくことに決めた。

しかし、今日は気温も上がる予報だったので、このまま湖畔で過ごす気にもならない。
温泉と夕食の買い出しを兼ねて美深へと出かけることにした。


後編へ続く  
朱鞠内湖キャンプ(前編)の写真  



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